初めて体験した白熱灯の車内は70年代末、東北本線のオハ61形だったと記憶しています。薄暗い灯に浮かび上がるニス塗りの木目模様は、一人旅の鉄道少年を感傷に陥れるに充分でした。
しかし、電気ばかり食う前近代的な白熱電球は当時既に希少な存在で、残っていたのは鋼体化客車と中小私鉄の一部くらいでした。
▲モハ31 登山口 1990-9
そんな中、未だ全車両がオレンジ色の光を燈していたのが野上電車。
「白熱灯の世界」を満喫するべく何度か通いましたが、1990年晩夏の訪問では野上中周辺で夕暮れを迎えました。
静かに発車を持つ最終電車。
乗客はなく、虫の音だけが聞こえてきました。
▲いずれも登山口 1990-9
LEDがこれだけ普及しても未だに「電球色」が残っているのは、原点回帰と言うか、やはり人間にはこの色が合っているのでは、と改めて感じます。
野上電車の夜 →→ その1 / その2
これ、実は電球ではなく、チューブ状の管球なんですね。関西の電車には結構多く見られました。嵐電のモボ111、モボ121形などが最後までこれでした。
返信削除写真から受ける印象は、常世へ誘う無常観があふれていますね。
返信削除ただ、終点着けばすぐに電源オフという“現実”があったようですが。
いつかは自分も古ぼけた客車に乗って、二度と帰らない世界へ旅立つのでしょうか。
モハメイドペーパーさん
返信削除阪急車の23・26などがグローブ球だったに対し、阪神車モハ31・32・24などはこの管球でしたね。
初めて嵐電で管球を見た時は何だこれ・・・と驚いてしまいました。関西の電車は照明一つ取っても凝ったものを使っていたことが偲ばれます。
12号線さん
返信削除これらの写真から無常観を感じ取っていただければ幸いです。薄暗い駅舎やオレンジ色の車内には何度もレンズを向けて来ましたが、やはりそこら辺に惹かれたせいかも知れません。
日方で終電から降りた途端、いきなり電源をオフにされた時は驚いてしまいましたが、センチになっていた頭が現実に引き戻されました(苦笑)。