2021年7月25日

憧憬の仇敵・230

 ▲高松琴平電鉄36 房前 1989-2

京急デハ230形の現役時代には残念ながら間に合いませんでした。
昭和初期製にも拘らず巨大な窓に浅い屋根と軽快なデザイン、同じ戦前形なのに「東武32形と何故こうも違うのか」と気になっていながらも、国鉄や中小ローカル偏重だった当時のこと、ついつい後回しにしてしまったのでした。

私鉄の情報は極端に乏しい1970年代、雑誌に登場する記事と言えば大手の新車くらいで、旧型車の引退などは豆粒のような投稿コーナーに載るくらいが関の山。あとは軒並み賞味期限切れの「後情報」ばかりでした。
▲この切符で空港線での引退を知った次第。大師線は発売しなかった気も

・・・という訳で長らく憧れの存在だったデハ230形ですが、一方で琴電の在来車を追いやった仇でもあります。

「阪神の喫茶店」こと先代30形を始め、モニタ屋根の610や旧山陽の920、そして京急時代の先輩格・鋼体化車10形などを次々に放逐。こんな訳で彼らに対しては憧憬と怨嗟が入り乱れる複雑な心境にありました。

▲32と旧南武の81。窓の違いが際立ちます 1989-2

230形時代を含め、初めて会ったのは1985年連休の四国行でのこと。
既に全7編成14両が出揃い、志度・長尾線の主力になっていました。

一見全部同じに見える京急230形、しかしルーツは第一陣の湘南電鉄デ1形に始まり、製造年次に併せて京浜電鉄デ71・83形、湘南デ26形、京浜デ101形と細かく別れ、車体や機器類が微妙に異なります。琴電には旧湘南デ1形、京浜デ71・83形がやって来ますが、こちらは元京浜デ85(→京急デハ270)の34です。

▲今橋 1985-5

志度線のネグラ、今橋検車区。
琴電経営破綻の端緒となった1994年の同線分断によって、この検車区も離れ小島になってしまいました。現在大規模検査などは仏生山車庫まで陸送して行っているそうで、どう考えてもこの分断は愚行の極みとしか思えません。


▲いずれも今橋 1985-5

春日川を渡る30形。
当時の訪問目的は勿論1000・3000・5000らでしたから、これが来るとガッカリして適当にシャッターを切っていました。京急時代は憧れの存在だったのに、この豹変ぶりは我ながら困ったものです。


▲いずれも春日川-潟元 1989-2

志度線随一の名所「房前の鼻」。
このポイントも、現在は防潮壁ができて視界がめっぽう悪くなりました。


▲いずれも塩屋-房前 1989-2 

こちらは長尾線。
こうして見ると、貫通扉の有無で随分と印象が変わりますが、断然「なし」の方に分がありますね。

▲いずれも水田-西前田 1989-2


▲瓦町 1989-2

30形が主役に伸し上がった一方で、1000・3000・5000形らの引退がなかったのは幸運でした。生え抜きメンバーは最後の最後まで外さない・・・と考えたのかどうかは分かりませんが、この姿勢が後々の動態保存に寄与することになります。

▲高田 1989-2


▲春日川 1989-2

さて一大勢力になった30形でしたが、1999年から登場した名古屋市営OBの600形・700形に取って代わられる形で姿を消していきます。
2001年に花道を飾るはずだった最後の27+28編成は直後に襲来した琴電経営破綻によって図らずも延命、07年まで孤塁を保つことになりました。


▲房前 1989-2

2 件のコメント:

  1. 1970年代の鉄道雑誌は、国鉄優等列車と蒸気機関車の記事ばかりでしたね。まあ、私鉄や地域情報をメインに誌面を作ろうとすると、売れ行きが悪かったそうですが(笑)。中小私鉄の動向に至っては、鉄道ピクトリアルの読者短信が頼みの綱でしたね。

    京急230形は志戸・長尾線では当たり前のように走っていたので、琴電生え抜き車両や南武鉄道や宮城電鉄の車両など、他の希少電車の方に目が向きがちでしたが、非貫通の230形が海岸線や鉄橋を走る姿は絵になる光景ですね。最近の志戸・長尾線は施設や沿線の都市化が進んでいて驚きです。

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  2. 緑の猫さん

    当時の鉄道誌はカラーグラフから本文記事まで蒸機の記事ばかりでしたね。
    75年にC57135が室蘭本線でさよなら運転をするや、ポスト蒸機は国鉄特急(特にブルトレ)とばかりに特集ばかりを組んでいた記憶があります。そういう自分も、これらの記事を食い入るように読んでいまたから、あまり悪くも言えません(笑)。

    琴電では在来車ばかりに眼がいっていたので、30形はついでに撮っていた感ありありです。しかし、改めてみると琴電塗装も実に似合っていますし、中々の男前と今更ながら思いました。ただ貫通扉はやはりうーむですね(笑)。

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