2021年8月9日

南海の昭和デンシャ+α その2


 ▲南海電鉄モハ2232+クハ2282 西天下茶屋 2021-5 

通称「汐見橋線」はレッキとした高野線の一部。
しかし現在は汐見橋-岸里玉出間だけが孤立路線化し、30分おきにワンマン列車が行ったり来たりだけの「下町ローカル線」といった風情です。

これは南海とは別会社だった高野線が、難波と別の立地にターミナルを設けざるを得なかった経緯によるものでした。紀伊山地からの木材を当時の水運の拠点・木津川口まで運び、収益の柱にしていたようですが、その盛業振りも現在は見る影もありません。

さて、新大阪近くの安ホテルに投宿した翌朝は、引き続き南海電車の昭和風景を追うことにします。前日に続いて6000系を追い駆け雪辱を果たすか・・・とも思いましたが、この日も朝からドンヨリ空、やはり予定通り汐見橋線へ向かうことにしました。



▲西天下茶屋 2021-5

起点・汐見橋駅。
天井の高い駅舎内はかつてのターミナルを彷彿とさせるものの、孤立ローカル線となった現在は却って寂寥感だけが募ります。臨時窓口はベニヤで塞がれ、かつて売店のあった場所も虚しく口を開けているだけでした。

改札口の上には、かつて古い観光案内図が遺物のように掲げてありましたが劣化が激しく撤去、現在はこれをイメージした新しい図に付け替えられています。




▲いずれも汐見橋 2021-5

先ず降りたのはこちら、木津川駅。
駅前には貨物ヤードや船着場跡と思しき場所がだだっ広い空地と化して横たわり、あとは工場や倉庫、若干の住宅地があるくらいで何とも殺風景です。かつて水・陸両運の要地だったとは俄かには信じられません。

ここを「秘境駅」と呼ぶ向きもあるようですが、乗降客数(1日140人前後)だけでは片付けられない、一種独特の雰囲気がありました。



▲いずれも木津川 2021-5

ホーム全景。
プツンと切られた貨物側線の跡だけが、かつての殷賑を偲ばせています。


木津川駅舎。
強いRを描いた入口は、1940年の建築当時はモダンな意匠だったのでしょう。

駅前広場はこのとおり。
ホーム上を高速道路が交錯し、遠く高層ビルやマンションが望めるのに、この一角だけが取り残された異空間のようでした。1時間後に退散するまで、もちろん誰も現れませんでした。
▲いずれも木津川 2021-5

次は本日のメイン、西天下茶屋駅です。
こちらも洒落た駅舎を構えていますが無人化久しいようで、かなりのお疲れモード。ただ周辺に何もない木津川とは違い、昔ながらの雑多な街並みが続いています。



優雅なデザインの明かり窓。モノクロの方が映えますね。
▲いずれも西天下茶屋 2021-5

ホームのベンチや壁は木部が殆ど。ペンキの剥落も長い間放置されているようでした。


▲いずれも西天下茶屋 2021-5

さてこれでオシマイですが、このまま駅からほど近いこちらの商店街へ。
汐見橋線訪問の第二の目的、実はこの商店街をうろつくことにありました。

ドラマにも登場したメイン通りの「銀座商店街」は人や車が錯綜し、新しい店もあったりとそこそこ賑っています。特に何と言うこともなく、期待外れとばかりに10分程歩き回ったところで引き揚げようとしましたが・・・
▲銀座商店街 2021-5

しかし、「引込線」のように奥へ延びる横道に入り込んで仰天。
細い通りが延々と、いつ終わるのかと思わせるほど続きます。昔ながらの喫茶店や衣料品店、雑貨屋や惣菜屋が雑然と居並び、しかも途中で枝分かれしたりしてかなりのスケールでした。


▲いずれも西天商店街・南本通商店街 2021-5

しかし残念ながら8割方はシャッターが降り、コロナ禍のせいかそれ以前から閉まっていたのか、週末だと言うのに時折自転車が通過する程度で、人気が殆どありません。

僅かにポツンポツンと開いている店があり、薄暗い中でそこだけが浮かんでいるように見えました。「お好み焼き」の蒼い暖簾の掛かった、そのうちの一軒に入ろうかと少し迷いましたが、その度胸はありませんでした。

▲南本通商店街 2021-5

4 件のコメント:

  1. モハメイドペーパー2021年8月9日 10:40

    汐見橋線の駅舎、開業時にはそれぞれに趣向を凝らしたモダンな造りだったことが偲ばれます。今は30分間隔の運転なので、複線を維持しているのが不思議です。

    返信削除
  2. モハメイドペーパーさん

    さすが元本線(現在もですが)だけあって手を掛けていますね。
    モダンな駅舎に長いホーム、そこに2両編成とはまさに「夢の跡」といった雰囲気です。

    大手の駅舎はずっと無知蒙昧だったせいか、こちらには全く振り向くこともなく幾星霜。
    そのうち元祖天下茶屋や岸和田といった個性的な駅舎も、うーむなビルに建て替わってしまいました。高野線の奥地にはまだ昔ながらの駅舎が多く残っているようですが、こちらも高野下みたいにビミョーなリニューアルを果たす前に訪問したいと思います。

    返信削除
  3. 昼間の鶴見線よりも閑散とした汐見橋線。大阪市の中心部からほど近いのに、まるで時間が止まっているような不思議な路線ですね。東京なら地下鉄乗り入れ路線として活用されそうな立地ですが。

    地方の鉄道や市街地はどこも整理や縮小が著しいので、穴場的な面白さや発見はむしろ大都市の方が残っているのかもしれないです。

    返信削除
  4. 緑の猫さん

    汐見橋線は「都会のローカル線」として既に話題になっているようですが、実際に見て本当に驚いてしまいました。まさに取り残された空間という表現がピッタリで、大阪市内なのになぜ再開発からも置いてけぼりを食っているのか良く分かりません。鶴見線は工場街の引込線といった風情ですが、それとも違う一種独特の空気感。ここら辺が人気の理由かもですね。

    返信削除

コメントはフリーでお受けしています。ただし管理人判断で削除することもありますのでご了承下さい。